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「さっ、できたわよりおちゃん!」
沙羅さんはヘアセットだけでなく、メイクもしてくれた。
鏡の中の自分を覗き込む。
三つ編みされた両サイドをハーフアップでまとめて、緩く巻かれた毛先。
目元はブラウンのアイシャドウで大人びた印象になっている。
まつげもマスカラのおかげで普段よりバサバサと存在感を主張。
唇も、ほんのりオレンジのグロスが塗られ艶々していて……
……可愛い。
って、なに自画自賛してるのあたし!
ポーッと見入ってしまった自分にとてつもない恥ずかしさが込み上げる。
冷静になろうとブンブン頭を振った。
「ああっ、りおちゃん!そんなにしたら髪が乱れちゃうわ!」
慌てた沙羅さんがあたしの肩をつかんだ。
「こっちも準備オッケー」
シンさんの言葉に、先生のホスト姿って、どんなだろ……とドキドキしながら衝立の向こう側へ。
目の前に飛び込んできた先生の姿に息をのむ。
全身黒でまとめたスーツ。
シャツの胸元のボタンは開いて、鎖骨が覗いている。
前髪をあげたヘアスタイルは初めて見る。
いつもの無造作な髪型も素敵だけど、ビシッとまとめたこちらも洗練された雰囲気で、甲乙つけがたい……。
「~~っ!!」
色気溢れる先生に、息が荒くなる。
やばい。過呼吸になっちゃう。
「りおちゃん、りおちゃん。落ち着いて。はい、深呼吸」
沙羅さんが穏やかな声であたしの背中を撫でてくれる。
「……鼻息がすごい」
先生が冷めた視線と辛辣な言葉を投げてきた。
ひどいっ。
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