第三章 『祇園に響く鐘の音は』

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ある程度の掃除を終えて、今度は窓を拭きつつ、賑やかなアーケードを眺めていると、階段からホームズさんが降りてくる足音が聞こえて来た。 「二階の掃除は終わりました。 それじゃあ、お父さん、もう行こうと思うんですが、葵さんと一緒に出ても大丈夫ですか?」 そう話すホームズさんに、私は驚いて振り返った。 「ああ、今年一年ご苦労さま。ゆっくりして来るといい」 カウンターを拭きながら、ニコリと微笑む店長。 「えっと、どこに行くんですか?」 戸惑いながら尋ねると、 「僕はパーティの準備があるので、先に店を出るんですよ。 良かったら葵さんも一緒にと思いまして。どうでしょうか」 「わ、わぁ、ぜひ」 強く頷いて置いていかれないことを知りつつも、慌ててエプロンを外した。
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