君と?

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11月半ばの鴨芽銀座商店街は、ハロウィンとクリスマスが入り混じる不思議な空間になる。 学校帰りの夕暮れ時。 古市履物店のガラス窓には店じまいと長年の感謝を綴った張り紙が貼ってあった。 フレッシュフィッシュの奥さんからお爺ちゃんが亡くなったと聞いたのは数日前。葬儀とかはもう済んでいて、お婆ちゃんは既に息子夫婦と一緒に暮らしていると聞いた。 いつも開けっ放しだった店の奥の襖はピタリと閉じられていて、未だ商品の並ぶ店内をガラス越しに複雑な気持ちで眺めた。 「店は改装して貸店舗にするんだって。生まれた町を何だと思ってんのかしら」 「あら、アンタまだ聞いてないの?あそこは更地にして、駐車場にするんだって」 履物屋の斜向かいの漬物屋の奥さんと、その先のタバコ屋の女主人が立ちつくす私に教えてくれた。 「取り壊し、ですか?」 降って湧いた話に戸惑いを隠せない。 空き部屋の方が多いアパートだけど、私以外にもあそこには住んでいるのに。
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