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「帰んなよ」
「でも…………」
「お前に来てほしかった」
「え…………?」
比呂斗がもう片方の手で、そっと俺の頬を撫でる。
じわじわと熱が上がって行く。
比呂斗は掴んでいた腕を離すと、俺の首に巻きついた。
そんな甘えたような仕草は初めてで、俺は突っ立ったままゴクンと息を呑むのがやっとだった。
「…………本当はもっと早く来てほしかったけど、俺、片づけ得意じゃないし。嫌だろ、お前、散らかってるの。いつも片付けてくれんじゃん、社長室も、お前の部屋も」
「ああ…………」
「俺の部屋まで来たら、お前に余計な仕事を増やすだけなような気がしてさ。…………お前ん家の方が、会社に近いし」
「だから、いつも俺のとこに?」
「うん」
スリスリと比呂斗が俺の首筋に頭を埋めるから、比呂斗のふんわりとした茶色がかった髪が俺の頬を撫でる。
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