第1章

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あの方は…ため息をひとつ付いて、 「ちょっと二人で話をさせてくれるか?」 そう言うと、 あの方のお着きの人と笹本が事務所を出た。 ひとつお辞儀をして。 これ… ソファーに座り直したあの方が、ハンドバッグから封書を出してテーブルに置いた。 宛名には 青山 美郷 様 裏返すと差出人 青山 勝 父さんからの手紙。 と言うことはこの人が青山美郷? 俺の知ってる名前じゃない。 どういうことなんだ? 「勝は私の一番下の弟。 あんたは私の甥っ子と言うことだ。 父は… まあ、財界を裏で牛耳る、名乗ると誰でも知ってるような人間だった。 もうあの世だけど。 手紙が来てたことは知らなかった。 私も結婚して家を出てたからね… 父が亡くなって金庫の中で見つけたときには、 勝はもう…亡くなってた…」 冷めてしまったコーヒーを、 一口飲む。 「一生名乗ることはないと思ってたんだ。 でも、 手紙を読んでしまったから。 調べるとあんな生活を送ってるあんたを見つけて… 人並みの生活をさせてやることが、 勝への供養になると思ってしまった」 この人が…俺と血の繋がりのある…叔母?
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