◇戻れない道◆

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「一体、どうしたの?」 重い唇をなんとかこじ開け、呟くように答える。 「…………家に、帰るんです」 「えぇ? どうして?」 「…………」 理由をうまく説明できるはずもなく、俯く。 「もしかして、僕のせいなのかな?」 「いえ、違います。そうじゃありません」 申し訳なさげに言われて、それはさすがに即座に否定した。 「じゃあ、どうして? 家で何かあったの?」   駄々っ子を諭すような優しい口調。 「……いえ、お気になさらないで下さい」 だけど、やはり理由は言えず、再び俯くと、笹田先輩が小さな吐息を漏らした。 「一体、どうやって帰るつもりなの?」 「それは……フロントで、タクシーを呼んでもらいます」 「ここから!?」 「……はい」 笹田先輩は次の言葉へ繋げず絶句している。
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