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「ちょっと、急に……」
引っ張らないで。と続けようとして、近くに男の顔があって口をつぐんだ。
さっきまで笑っていた男の顔は、真顔になっていた。
「帰るの?」
近い距離でじっと見つめてくる目から、目を逸らしたいのに逸らせなくて、喉が小さく鳴った。
この距離も、男の今の雰囲気も、素面(しらふ)の私には、キツイ。
「ま、いいけど」
この雰囲気に飲み込まれそうになった時、男がそう言って私の手首をパッと離した。
「きっと、また会えるから」
男が続けた言葉に、心臓が跳ねた気がした。
掴まれていた手首はなぜか熱くて、鼓動も一気に早くなっていく。
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