軋む助手席

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静かな車内。 フロントガラスを叩きつける雨音と、遠くの方で雷の唸るような低い音が聞こえていた。  あからさまに顔を直視することはできないので、視線は自然とハンドルを握る手を追ってしまう。 大きな手。長い指先。 男らしくゴツゴツとした節骨。 アクセルを踏むタイミングもハンドルさばきも上手で、とても乗り心地が良かった。  ホームページの社内報に部長の顔写真が出ると、アクセス数が上がるくらい誰が見てもかっこいい部長の顔。 あえてその顔を見ないようにしているというのに、指先や腕からも色気が放たれているから否応にも心拍数が上がってしまう。 「着いたぞ。ここでいいのか?」 部長は私が住んでいるマンション内の駐車場に車を停めた。 「ありがとうございます。あの……」 私はシートベルトに手をかけたまま部長を見つめた。 まだ、帰りたくはなかった。 もっと一緒にいたいと思った。 「どうした?」 部長は不思議そうに私を見据えた。
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