第1章

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俺は彼女のことをほとんど知らない。 名前も、年も、学校も、血液型も、家族構成も、電話番号も、メールアドレスも知らない。 知っている事といえば、好きな本が似ていることだけだ。 出会ったのは偶然。 偶々図書館で借りようと思った本を彼女が偶々返そうとしていた。 有名ではないその本を読んでいる人が身近にいる。 そのことが嬉しくなり、つい声をかけた。 すぐにその本の話になり、時間を忘れて語り合った。 彼女は俺とは少し違った感じ方をしていて、それがいい刺激になる。 その日から、俺と彼女が会ったら本について話し合うのが日常に加わった。 彼女は本の虫なのか、俺が行くといつでもいる。 ちょっと挨拶をしたあと、本を借りて二人で話す。 たまに、話の中に出てきた本を借りる。 それだけの関係だ。 今日もまた、俺は図書館に行く。
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