結婚へ

10/11
1126人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
   式は三日にわたり行われた。  案の定柊二は初日から三日間祝い客によって  潰されることになったが、身重の実咲にとっては  むしろその方が良かったかも知れない。  柊二が酔客の相手をすることで実咲は早々に  引き上げることができ、三日の祝言を乗り切ることが  出来たのである。  商売相手に対しても面子を立てることが出来たし、  実咲の身体も護ることが出来た……筈なのだが、  その事に対する満足感を感じろと言うのは  今の柊二には酷だった。 「ううっ・・・・・気持ち悪っ・・・・・。」  挙式が終わった次の日、  酒を浴びるように、というより酒に浸されてしまった  感のある柊二は二日酔いで苦しんでいた。  濡れ縁の柱に身体をもたれかけさせ、  激しい頭痛と吐き気に耐えている。  温もりを含んだ春の風が虔三郎の茶褐色の髪を  嬲ってゆくのだが、普段なら心地良いばかりの  春風さえも今の柊二にとっては辛さを助長するもの  でしかない。 「柊二さん、大丈夫?・・・・・はい、湯冷。  今日の仕事は休んでね。こんな身体じゃ  かえって皆んなも気を遣っちゃうと思うし」  濡れ縁でぐったりしている柊二の背中をさすりながら  実咲が柊二に湯冷ましを差し出す。  その姿は新婚夫婦と言うよりむしろ長年連れ添った夫婦  といった風情さえある。 「すまない……竹内に伝言を……仕事は……無理だと」
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!