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式は三日にわたり行われた。
案の定柊二は初日から三日間祝い客によって
潰されることになったが、身重の実咲にとっては
むしろその方が良かったかも知れない。
柊二が酔客の相手をすることで実咲は早々に
引き上げることができ、三日の祝言を乗り切ることが
出来たのである。
商売相手に対しても面子を立てることが出来たし、
実咲の身体も護ることが出来た……筈なのだが、
その事に対する満足感を感じろと言うのは
今の柊二には酷だった。
「ううっ・・・・・気持ち悪っ・・・・・。」
挙式が終わった次の日、
酒を浴びるように、というより酒に浸されてしまった
感のある柊二は二日酔いで苦しんでいた。
濡れ縁の柱に身体をもたれかけさせ、
激しい頭痛と吐き気に耐えている。
温もりを含んだ春の風が虔三郎の茶褐色の髪を
嬲ってゆくのだが、普段なら心地良いばかりの
春風さえも今の柊二にとっては辛さを助長するもの
でしかない。
「柊二さん、大丈夫?・・・・・はい、湯冷。
今日の仕事は休んでね。こんな身体じゃ
かえって皆んなも気を遣っちゃうと思うし」
濡れ縁でぐったりしている柊二の背中をさすりながら
実咲が柊二に湯冷ましを差し出す。
その姿は新婚夫婦と言うよりむしろ長年連れ添った夫婦
といった風情さえある。
「すまない……竹内に伝言を……仕事は……無理だと」
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