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「で、でも……っ!」
そうだ、あの時見かけた人は……。
「あの人、髪短かったじゃない!み、美青は肩より髪の毛長いんだよ!?」
「あぁ……」
あたしが眼前に突きつけた人差し指に顔をしかめながら、沖田くんは左前方を見つめる。
「あれ、髪の毛の上からマフラーを巻いてたんですよ。はみ出てた髪の毛は長かったですよ」
「う、嘘……!」
「よく見れば分かりますよ」
「……う」
そうだ、あの時。
あまりのショックに、よく見ないままに沖田くんの彼女だと決めつけていたかもしれない。
「他に何かありますか?」
「……」
いつの間にかいつも通りの自分を取り戻したらしい沖田くん。
勝気な笑みであたしを見下ろす。
「で、センパイ」
「っ」
ザク、と雪を踏みしめる音が響いて、沖田くんがあたしに1歩1歩近づいてくる。
「さっきの……、俺のことどう思ってるのか……はっきりした返事、下さい」
「……」
辛そうに、綺麗な顔を歪める沖田くん。
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