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というのが、30分前の出来事......なんだが。
......自分が言った言葉を、後悔、したのは......初めてかもしれない......
まさか、青葉さんがあんなに陽気に行ってみたい、と言っていた場所が...
「それではご主人様♪今からこのシロップをかけさせていただきます♪では、いきますよー♪萌え萌えきゅん♪」
「萌え萌えきゅんっ!」
......メイド喫茶だなんて、誰が思うんだ...!!?
歩いている途中でおかしいな、とは思っていたんだ。普段行かない街の通り、店の並び...迷いのない足取りで青葉さんが入っていったのは、一際大きな店だった。
どうやら、人気ナンバーワンのお店だったらしく、店内には俺達以外にもたくさんの客がいた。
「......おい、一成.....これは、どういう事だ...?」
周が、体を震わせながら俺をにらみつけている。
「い、いや、俺もさすがにメイド喫茶に行きたがっているだなんて、思いもしなくて...あ、周がこんな所嫌だってのはわかるけど、ここは...」
「んな事聞いてんじゃねえ!!!何だこの甘くてふわふわした食い物は!?うめぇじゃねえか!」
「青葉さんの顔をたてて.........へ?」
「店内の装飾からして期待はしてなかったけど...出てくるもんはうめえじゃねえか!!特にこのふわふわした丸いやつ...気に入ったぞ!」
「ぱ、パンケーキが気に入ったのか...?」
「ぱんけえきっていうのか?これは。......おい、今度お前もこれ作れよ」
「...あ、ああ...頑張る......」
......周は、メイド喫茶に連れてこられた事に対して、特に何も気にしていないようだった。
...つうか、食べるのに夢中で周りが見えてねえ...って所か......流石、周......大物だな...
......でも、確かに、出てくるものは全部、うまいんだよな...
俺もメイド喫茶に来たのは初めてだけど...こんなに食べ物がうまいもんなのか...?
もっと、こう...女の子の可愛さとか、対応の良さとか...そういうので成り立ってるもんだとばかり思ってたけど...その認識は間違っていたんだろうか。
楽しそうにメイドと喋っている青葉さんの横で、俺と周は黙々と机の上に並んだ料理を片っ端から食べていった。
そしてあらかた食べ終わった頃だった。
「ふー、ついてきてくれてありがとう、カズくん、犬養くん!」
「全然構いませんけど...どうして、メイド喫茶に...?」
「いやー...こういうお店で働いてる子達ってどういう事考えてんのかなーって...知りたくてさ。僕、実際に目にしないと読めないから...来てみたかったんだよね。......心の中。覗いて見たくてさ。......予想してた通り、面白かったよ」
そう言って笑う青葉さんの顔に何故かゾクッとした恐怖を感じたのは、気の所為だと思う事にした。
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