例えばこんな困惑

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教室に戻って、理事長の要件は何だったかと煩い洋一を無視して、同様に煩い双子に補習の事を告げれば、 授業開始のチャイムと共に、真っ青な顔をして教室から逃げていった。 「なるへそ」と呟いた洋一はそれっきり静かになった。 放課後、適当に終わったホームルームに欠伸を一つしてから席を立てば 「望っ!これから行くのかっ!?」 恐らく確実に幻であろう尻尾をブンブンと振った洋一が鼻息荒く聞いてくる。 「……そのつもりだけど」 「そっかそっかぁ、気ぃつけてな!」 まさか、一緒についてくるつもりじゃないよな、と要らぬ心配をした俺は何処か拍子抜けするほど大人しい洋一に目を丸くした。 「じゃ!俺、先帰るから!なんか萌え…じゃなかった困ったことが起こったら、明日報告よろ!」 いつもなら面倒な程に纏わりついてくるのに、それだけ言って帰って行った洋一に、俺は一人疑問符を浮かべた。 (いや、別にいいんだけどな。別に。) あいつが意味不明なのは今に始まったことではない。 パサリとカバンから理事長にもらった1年から3年までの補習生のリストの紙を出して、思考を切り替える。 ぱらぱらと用紙を捲りながら、補習生を確認していく。 1年生は、D組生がほぼ全員と、それから他クラスの生徒がちらほらと何人か。 2年生はD組生が半数と、他クラスの生徒が合計で同じくらいの人数。 3年生は……流石に3年にもなると、将来の事を見据えるという意味もあってか、勉強を疎かにする生徒はそういないようで人数は少なめだ。 多いほうを先にやっつけるべきか、初日は様子見がてら少ないほうに行くべきか。悩むところだ。 何方にしろ面倒なのには変わりないのだけど。
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