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抱え上げられるのも、付いて行くのも、無謀かも知れない。
だが、とお子は自分の勘を信じた。
それに、“自殺”を目論んだのかという、疑いがかかっている気がする。
誤解は解いておきたかった。
軽々と抱え上げられた腕の中、とお子は喉と目元に力を入れる。
泣きそうな気配を何とか沈めると、とお子は『ひじり』に微笑んだ。
とお子の笑みを見て、聖(さとる)が驚いたように動きを止める。
そしてすぐに、とお子の同意を汲み取って歩き出した。
歩道橋の階段から落下して、怪我を負った小学生を、面倒でも放っておけないのだろう。
しかも先ほど、とお子は『たすけて』と縋った。
とお子が突然、零した言葉。
聖(さとる)はそこに、無視出来ない何かを感じ取ったのかも知れない。
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