【26】くるみのオトコ

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「そっかー、春陽は明日には帰っちゃうのかー。」 私たちは夜になると早々に千夏を寝かし付け、平屋の縁側、月明かりの下でビールを飲んでいた。 ツマミはもちろんうちのチーズだ。 「うん、一応ソロコンサートというものを演らせてもらえるからね。」 「フフッ、知ってますよーだ! 私だって歴としたファンクラブの一員なんですからね!」 私は得意気にフンと鼻息を荒くした。 「そうだっけ? 胡桃は薄情だからなー。 僕をフッた途端に辞めたのかと思った。」 春陽はそう言ってニヤッと笑って私に顔を向けた。 「幾ら何でもそこまで薄情じゃありませんー! 私はちゃんと春陽のピアノが好きだもん。 だからずっと応援してるよ。」 私も負けずと春陽を見つめ返す。 春陽はそんな私をハハッと笑って月を仰いだ。 そして小さく声にする。 「…あんなプロポーズをされれば僕の完敗だ。」 私はそれには答えないでビールをゴクッと飲んだ。 「今日はこっちに泊まるでしょ? 千夏が春陽と一緒に寝たいって。」 「うーん。 僕は母屋の方に泊まるよ。」 「え?何で? もう布団の準備もしてるよ?」 「いや、そんな事したら千秋に殺されるから。」 春陽はワザとらしく手で首を押さえ付け、それから舌をベッと出した。 .
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