【26】くるみのオトコ

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いつ見ても綺麗な瞳。 春陽の深碧色の瞳。 オリーブブラウンの髪が優しく風にそよいでいる。 「あ、もう到着してたよ。 僕が今日お呼ばれしたのはあの子が理由なんだろ?」 急に春陽がこっちを向くもんだからバチッと私と視線が絡んだ。 「あ、うん、何色だった? 白?茶?」 見惚れていたのが少しバツが悪い。 「内緒。 千夏に怒られるから…。」 そう言って春陽はクスッと笑ってシーッと唇の前で指を立てた。 「じゃあ我が家の新しい一員を拝みに行きますか!」 私は春陽の背中をパシッと叩いて3人で厩舎に向かった。 そうなのだ。 今日はこの牧場に仔馬がやって来る。 春陽の口ぶりだともう到着してるみたいだけど。 その仔馬は千夏の馬。 私にはハヤテがいるけど千夏には愛馬がいない。 だから私がお父さんに頼み込んで今日に至ったってわけだ。 厩舎に入るとお父さんとお母さんがその仔馬の寝床を作っていた。 せっせと藁をたくさん敷き詰めている。 「千夏、見てごらん?黒い馬だよ。」 私はその小さな仔馬の前に千夏を立たせた。 「小たい!可愛いっ!!」 「うん、まだ仔馬だからね。 千夏がこの子に名前を付けてあげて?」 私は後ろから千夏を抱きしめるようにして屈んだ。 「うーんとねー、…クロ!! チナ、クロにするー!!」 千夏は私から離れてピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいる。 黒い馬だからという理由でクロと名付けた千夏はやっぱり私にそっくりだ。 昔私が白い馬を見てハクと名付けたように。 .
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