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私はそれを見てフフッと笑う。
春陽とはこの3年間良き友人でいた。
春陽のこの寛大なる心のお陰で私たちの関係は終わる事なく続いていた。
私が春陽を選ばなかった時点で終わると思っていた絆も、
それを彼が壊さないでいてくれた。
春陽の心は本当に綺麗だ。
千夏が春陽を大好きな理由もきっとそこだと思う。
春陽は私たち親子が寂しくないよう、しょっ中遊びに来てくれる。
こんな田舎に文句も言わずに私たちに会いに来る。
それが千夏にとってたまにしか会えない父親代わりになっていた。
「千秋は?
今日帰って来るんじゃなかったっけ?」
「うん、昨日はそんな事言ってたけど、
何か忙しくて今日も帰れそうにないって…。」
「そっか…。
相変わらず忙しいんだな。
胡桃は寂しくない?」
春陽が私の心を見透かすように聞いてくる。
「……。」
私はこんな時どう答えていいかわからない。
「じゃあ今からでも僕に乗り換える?」
春陽の言葉に思わずゴホッと咳き込む私。
「なっ、何それ?
言ってる意味がわかりませーん。」
私はそれを冗談でかわしつつ、
だけど春陽はそんな私を横目にフハッとお腹を押さえて笑っている。
それが冗談なのかどうかもわからないまま、それでいていつも私たちはこのやり取りを繰り返していた。
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