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【グリーンベル】
「レイカー、お供えする花ってこれくらいでいい?」
「わっ!随分たくさん摘んできましたね」
リズリットの両手一杯に広がる色鮮やかな花の束に、丸みのあるレイカの茶色の瞳は更に丸みを増す。
「かわいいのが一杯咲いててさー、これでも厳選してきたんだけど…やっぱり多い?」
「うーん…でも、次はいつお墓に寄れるか分からないですし、うん!思い切って全部飾っちゃいましょう」
そう言って、レイカとリズリットはまだ切り口の新しい2つの墓石の前に多彩な花々を飾り付けていく。
黒獣神との決戦を終え、各地で復旧が急がれる昨今、それでも人々は緩やかに平穏な日常を取り戻しつつあった。
「あれからもう…ひと月になるんですねぇ…」
「うん…正直言ってさ、まだ受け入れられないよ…もう、一緒に居られないなんて…」
そんな事を言っていると、不意に緋色の瞳に涙が溜まって、墓標に刻まれた名前が歪んで見える…
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