寿命の見える少年 4

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「その日の夕方、私は弘と一緒に当施設の食堂で夕食後にテレビを見ていた時のことです。テレビ画面のすみにニュース速報が流れました。何と、私の乗る予定だった航空便が、北海道の日高沖で消息を絶ったというのです。とてもびっくりしました。」 その翌日、谷村氏が乗るはずだった飛行機の破片が海上で見つかり、墜落していたことが判明した。生存者はゼロだった。 谷村氏はそれ以来、少年の能力を信じ、意見を尊重するようになったという。 「弘が『3.2.1.』と数える事を私は冗談めかしく『お迎えのカウントダウン』と名付けております。あの子が幼稚園の時に、『お迎えのカウントダウンは、本当に素晴らしい力だけれど、人を傷つけることもある。だから、決して人に言ってはいけないよ。』と諭しました。 「それ以後、弘は人の寿命について一切口にしなくなりました。あの子が今後も人として生きていくためには、そうする他無かったのです。産んだ両親があの子を遠ざけたのも、寿命を読み取るというすばらしい能力に神への畏れにも似た恐怖を感じたせいだと思いますから。」 少年について一通り話し終えた谷村氏は、湯呑みのお茶をごくりと美味しそうに飲んだ。
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