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(帰りたい……)
心からそう思ったが、ここで私がケープを脱ぎ捨てて逃亡したら、
千笑ちゃんがヒステリーを起こしたり、
お店の人総出で引き止められたりして、
大騒動になることは想像に難くない。
それはもめ事を何より嫌う私の信条に反する。
ここは下手に逆らわず、さっさと終わらせてもらった方が良いと覚悟を決めた。
私が落ち着いたのを感じ取ったシンさんは、
早速、タイヤのついた小さな丸椅子に腰掛け、
よく磨かれたはさみに指を通すと、
左右非対称のえせおかっぱヘアの修正に取りかかった。
その手つきは驚くほど滑らかで、無駄な動きが1つもなかった。
比べるのも失礼なほど、母の作業とはどこをとっても全く違っていた。
そう感心している間に、もう半分切り終えてしまったらしい。
シンさんは椅子に乗ったまま反対側へ移動し始めた。
(予想以上に速い、この調子ならすぐに済みそうだ)
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