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【飛刀・五月雨】
カタナの武器スキルのひとつであるそれは、対象の敵単体に中ダメージの斬撃を飛ばして攻撃するというものだ。もともと接近戦用の攻撃スキルが大半であるカタナにとっては貴重な中距離攻撃スキルのひとつである。
空気を切り裂くように迫り来る斬撃は、絡みつく無数の蔦を次々と切り落とした。ナルグァァア!!というモンスター特有の叫びが一帯に木霊し、深緑の血飛沫を上げる。
拘束を解かれ石畳の上に着地したミレーニャは、直ぐに腰のホルダーから2本のダガーを抜き取って身構えた。
「あたしだって、只いいようにされてるだけじゃないんだからっ」
その時、再び耳をつんざくようなモンスターの叫びが轟き、先程よりも更に大きく地面が揺れ始める。
「本体が現れるな‥‥。全員その場から離れるんだ!!直ぐに陣形を立て直す」
「はいっ」
「そんなこと、あんたに言われなくても分かってるわよ」
すかさず状況を読み取ったエリオは他の3人を呼び集め、指示を出した。近接攻撃が主流のユキマルを先頭に、その直ぐ後ろにミレーニャを配置し、自らはいつでもサポートに回れるように後衛を勤める。あとひとり残された少女の前に立つと、右上のステータスバーで名前を確認してから話し掛けた。
「チェレッタはここで回復のみに専念してくれ。先ず今すぐミレーニャを。後は皆の残りHPの状況を見ながら臨機応変に頼む」
チェレッタは犬のような耳をピクリと動かしながら、ペコリとお辞儀をした。緊張しているのか怖がっているのか、手に持っている聖杖(セイントロッド)が少し震えている。
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