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鬱蒼と茂る若葉の香りを嗅ぎながら、時折地面から顔を出している木の根に躓かないように気を付けて傾斜のある道を登っていく。
さっきまでの長閑な田園風景は過去にタイムスリップしたような気になったが、木々に囲まれた此処はお伽の国にトリップしたような気分にさせてくる。
「頂上に魔法を掛けられ眠る姫がいる城がありそうですね」
「俺は、お菓子の家があった方が嬉しいけどな」
雅臣も俺と同じ気分になっているんだと分かる発言が、なんだか心が繋がっているみたいで擽ったいけれど嬉しくて、笑いながら返す。
「お菓子の家ですか。生クリームは指で掬って、拓也の苺に塗って味わいたいですね」
「ば、馬鹿じゃねーの」
一昨日の俺の誕生日ケーキの淫らな食べ方が、脳裏に生々しい音声つきでリプレイされ、一気に顔が火照ってくる。
生クリームを塗られてしゃぶられた胸の粒が、快感を思い出しジンジンと痺れてきた。
脳内に流れる映像が、生クリームを塗られた体を雅臣に食べられた後、雅臣に生クリームを塗って食べたシーンに移り変わる。
雅臣の逞しいモノが生クリームまみれになっている様に、喉が鳴り涎が溢れてくる。
下の口も、なんて旨そうなんだ、とキュウキュウと鳴き始める。
「俺も……雅臣に塗って食べたい」
寝言のようにポツリと呟いてしまった自分の言葉が鼓膜を揺らし、現実に引き戻されてはっとなる。
脳内の映像に夢うつつになり、とんでもなく恥ずかしいことを口走ってしまった。
「では、塗りあって、食べあいっこをしましょうね」
健全なスポーツをしようと提案するように爽やかに言う雅臣に、毒気を抜かれたように発火しそうだった顔の熱が弱まっていく。
「お菓子の家があったらな」
お菓子の家などないと分かっているが、もしあったらやってもいいと思っていることを伝えたくて、そう答える。
恥ずかしくて突っ慳貪な言い方になってしまったが、雅臣は嬉しそうにニコニコ笑っているので、気持ちは伝わったんだろう。
登りきったら足がプルプルしそうな傾斜のある凸凹の道だが、雅臣と一緒に歩いていると疲れを感じないから不思議だ。
頂上に近付くにつれて道を横切る木の根が増え、道幅も狭くなったので雅臣が先を行き、足下に気を付けながら後に続く。
二人の間には弁当の入ったトートバッグがあり、取っ手を握りあって繋がっているのは変わらぬままだ。
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