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やがてスカイプからの呼びかけもなくなった。
そうか。
燃え上がったものが消えて行くのは、こんな風に呆気ないものなのか。
どんなに恋しくても、会えなければ寂しいだけ。
姿が見れなければ、思い出すのも辛くなる。
鳴沢も同じなのかもしれない。
恋する気持ちだけでは、人は生きてはいけないのだから。
やけくそのように働いた。
働いて、働いて、辛すぎるこの気持ちが少しでも削ぎ落されるならそれもいい。
全然、軽くはならなかったけど……。
バレンタインを翌日に控え、ホテル内はカップルが溢れている。
ショッピングゾーンも、チョコレートを買い求める女性達で埋め尽くされた。
本番の明日は、昼間はウェディングの試食会、夜はディナーとジャズコンサート、客室も平日に関わらず満員御礼だ。
忙しい1日になりそうだと、帰宅した途端にスカイプの呼び出しがあった。
飛びついたそこには、懐かしくも見るからに疲れをにじませた鳴沢がいた。
『忙しくて』
思わず呟いてしまうほど疲れているのか、それともただの言い訳なのか、薄いパソコンの映像だけではわからない。
何と声を掛けていいかもわからなくて、無言で手をのばした。
触れられないその像は、何も応えてはくれない。
カメラに指先を近づけると『おいおい、遮らないでくれよ。せっかくの日和なのに』と、鳴沢が笑う。
鳴沢の腕がパソコンに向かって動いた。
『おれも触れているよ。日和に』
「うん。でも感じない」
『そうだな。返って寂しいものだな』
「一也さんも? 寂しい?」
『当たり前だ。もう何日日和に触れていないか。気が狂いそうだ』
「おれも……。おれも変になりそう。会いたいよ。キスしたい。抱かれたい」
『やめてくれ……。飛んで行きたくなる』
「ごめんなさい」
そこにいても手が届かない。
声を聞けても触れられない。
体が、気持ちが、手が、頭の奥が、全身で鳴沢の熱を欲しがる。
確実な体温と、肉と、その存在を。
『悪い。切るよ日和。お前を見て落ち着くかと思ったけど、余計に会いたくなる。辛いものだな』
「うん……」
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