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とぼとぼと帰るしかない日和は”二人のこれから”を何度も考え、考えても考えても何をどうしていいかもわからず、愛されたいわがままばかりの自分に嫌気がさす。
自分とは立場の違う鳴沢を縛り付けてはいけない。
これからも、何度もこんな風に離れ離れになるだろう。
そのたびにへこたれていては、自分も辛いし鳴沢にも迷惑だ。
強くなるしかないのだと、言い聞かせていればそのうち慣れてくるのだろうか。
「慣れる? そんなの……無理だよ」
会えば胸が高鳴る。
見つめれば触れたくなる。
触れたらキスしたい。
キスしたら抱かれたい。
抱かれて、抱かれて、ドロドロになって溶け合って、そうしてようやく鎮まって行くこの始末の悪い体。
いつの間にこんな体になってしまったんだろう。
何も知らなかったのに。
自転車で冷たい風を切って走る。
頬がキンっと冷えて気持ちを浄化してくれる。
それでも体の奥底で、鳴沢を想えば火が灯る。
自分では鎮めようのない焔が。
坂道を下りながら、青く澄んだ空を仰いだ。
あの、手の届かない高みの向こうに鳴沢がいる。
もしかしたらこれからもずっと、届かない相手に必死で手を伸ばすしかないのかもしれない。
そんな人を好きになったのだと、諦めるしかないのかもしれない。
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