第一話 バレンタインの魔法使い

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 とぼとぼと帰るしかない日和は”二人のこれから”を何度も考え、考えても考えても何をどうしていいかもわからず、愛されたいわがままばかりの自分に嫌気がさす。  自分とは立場の違う鳴沢を縛り付けてはいけない。  これからも、何度もこんな風に離れ離れになるだろう。  そのたびにへこたれていては、自分も辛いし鳴沢にも迷惑だ。  強くなるしかないのだと、言い聞かせていればそのうち慣れてくるのだろうか。 「慣れる? そんなの……無理だよ」  会えば胸が高鳴る。  見つめれば触れたくなる。  触れたらキスしたい。  キスしたら抱かれたい。  抱かれて、抱かれて、ドロドロになって溶け合って、そうしてようやく鎮まって行くこの始末の悪い体。  いつの間にこんな体になってしまったんだろう。  何も知らなかったのに。  自転車で冷たい風を切って走る。  頬がキンっと冷えて気持ちを浄化してくれる。  それでも体の奥底で、鳴沢を想えば火が灯る。  自分では鎮めようのない焔が。  坂道を下りながら、青く澄んだ空を仰いだ。  あの、手の届かない高みの向こうに鳴沢がいる。  もしかしたらこれからもずっと、届かない相手に必死で手を伸ばすしかないのかもしれない。  そんな人を好きになったのだと、諦めるしかないのかもしれない。
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