第3話

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カーキ色のダウンジャケットに顔を埋め、すうっと息を吸い込んだ。 掠めた匂いは冷たい空気と共にタッちゃん家の懐かしい匂い。 そして、タッちゃん自身の匂い。 ふと、違和感を覚えた。 「タッちゃん?」 抱きしめられたまま、名前を呼んだ。 「何だよ」 「...煙草、止めたの?」 元カノが吸ってって言われていたから吸っていた煙草。 以前のタッちゃんからは煙草の匂いがプンプン匂っていたのに、今はもう全然匂わなくなっていた。 「あー...止めた」 「...止めれたの?」 「おー、あっさりと。偉いだろ」 頭上からえばって聞こえてくる声。 あっさり止めれたんだ...そうか...よかった。
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