開門と別れ

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「なんでだ?あんなに王になりたがってたのに」 「あたし一度も王になりたいとは言ってないよ?死族の守っていた物を守りたかっただけ。それが果たせるなら王位には興味ない」  あっさり言ってのけるチスイ。確かに一度も「王になりたい」とは言ってなかったかもしれない。が、このままチスイが王になっても誰もが納得するだろう。 「仁が無事に帰れてたら仁の名だけもらって王位に付くつもりだったけどね。でもこんな形で役に立つとは思わなかった」 「待てよ。俺、王になっても何をしたらいいか全然知らないんだぞ?そんな奴が王になって本当に大丈夫だって思ってるのか?」 「大丈夫だよ。仁だって知ってるでしょ?この世界では力のある者が王になるの。この世界で一番力のある仁が王。それで何の問題もない。寧ろ武闘大会であれだけの活躍をした仁が王にならないであたしが王になる方がよっぽど問題」  理屈は分からないわけじゃないがそれでも納得は出来ない。想像出来ない。俺が王になるなんて。  動けないでいる俺にチスイが歩み寄ってくる。俺の目の前で足を止めるとそっと俺の頬に触れる。 「これは償いでもある。仁が帰れなくなったのはあたしのせい。その仁を差し置いて王になんてあたしはなれない。だから……」  言葉を詰まらせるチスイ。そんな風に言われてしまったら断れるはずもない。 「……分かったよ。どうなっても知らないからな」
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