開門と別れ

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「やっぱりここにいた」  聞き慣れた声に頭を上げる。そこにはチスイとアジューカスが立っていた。チスイの事だからとっくにリリィを送り届けただろうとは思っていたが、ここに来る用はもうない筈だ。 「……何しに来たんだ?」 「何って新しい王を迎えに」  立ち上がりながらの問い掛る。その問いに対しての返答の意味が俺には分からなかった。新しい王はチスイのはずだ。武闘大会を勝ち上がった一族の代表が王になるんだから。 「アジューカス、アレを仁に」 「はっ」  すっかりチスイの臣下のようなアジューカスが俺にペラペラの紙を渡してくる。俺がそれを受け取ると、それは武闘大会の申込書だった。申込書の一番上、一族名の所には「ビャクヤ一族」と書いてある。 「これって……」 「大会の前に仁があたしに聞いた事覚えてる?」 「俺が聞いた事?」  「前王政に関わりし者」の範疇に、チスイは含まれてないのか。大会の会場に向かう途中、俺は確かにチスイにそう聞いた。 「その時、あたしは言ったよね?方法は考えてあるって。それがこの方法」  言ってる事は理解出来る。がその意味が分からなかった。
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