プロローグ

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 それは一晩中彼と一緒にいるのが嫌で、適当に理由を付けてホテルから抜け出した朝だ。  その年の夏は連日のように猛暑が続き、早朝といえ、うだるような暑さだった。  駅の途中で公園を見つけ、緑に目を奪われながら門を潜り抜ける。  白み始めた空は瞬く間に青へと変化し、光が昨日と代わり映えのない煩わしい現実を映し始めた。  まだ犬の散歩やジョギングをするには早すぎる時間だ。しんと静まった遊歩道の一角で、忙しなく動く人影が見えた。  コットンの半そでシャツに、ジーンズ姿。まだ高校生にも見える年若い青年で、細かく体を動かしながらベンチの周りを探っている。  茂みの中、ゴミ箱の中、ベンチの下、地面。その動きを見ながら、小学生の頃に飼っていたハムスターを思い出していた。  私が足を止めたのは、ほんの気まぐれだ。  良い人になりたいわけじゃない。  でも少しだけ、良い人のフリをしてみたかった。
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