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途中、久しぶりに回り道をした。
さとると出会ったマンションの裏通り。
先日、すっかり部屋に馴染んだルナの写メをさとるに送ると、自分のことのように喜んでくれた。
ぽつんと風雨にさらされ古びたベンチはまだそこにある。
あの日、夜の小さな公園に、野良猫のような瞳をして現れた人間嫌いの青年はもういない。
見上げた夜空に浮かぶ月光が、地上のあらゆるモノにあまねく注がれていた。
ーー帰ろう。
俺の大切な家族が待つ家へ。
この世界で、最も安らぎと癒しをもたらす幸せの在処。
俺の居場所は……
「ただいま、ケイ。ルナ」
「おかえり、イツキ」
「ミャーン」
ーーここにある。
『夜の片隅で Moonlight City』
終
20160214
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