凜君思考

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少し乱れた髪をかきあげながら、呆然としている俺を見下ろして来る彼は掛けていた眼鏡すら外していなかった 劣情に濡れてるのかそうでないかも判断が付かない。逆行になった影だけがひたすらに威圧的で、俺は降参するしかない狩られた位置に居ることを自覚させられる 「こっちから連絡するから」 「たんごさ、…待ってよ、こんな…」 「足りない分は自分で済ませて。ほらここ、指入れてね」 「…っ!」 さっき微かに押された穴の奥は一瞬の気持ち良さにじりじりとして、この先に待ち受けていた筈の熱い他人の温度を待っている。自分で慰める為じゃない。…あんたの形でしかないのに 「自分で出来るでしょ?」 冷徹な視線。物凄く何かに怒っている、のは分かる。俺があの二人と会ったから?会ってるでしょ?自分だって 「おやすみ凜」 乱れた着衣の俺は狭いソファに一人置き去りにされた。見送りも必要ない、とばかりに彼はカウンターに置いた自分の財布と携帯をまたポケットに仕舞い玄関の外へと消える 心の置き場もなく、俺は冷えてしまったのにまだ乾かない、出したばかりの自分の汚れた部分を見れない さっき俺に施されたのは、何だ? 「…俺は…ものじゃないよ…」
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