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「やめて!!お願い!!お願いだから!!」
ついに私の口から懇願の言葉が漏れ、それに男は嬉しそうに瞳を揺らす。
「お前の《お願い》は、いつも《俺達》にとって《命令》だったな」
男は遠い昔を思い出す様に少し遠くを見つめたまま笑った。
その笑みはどこか儚く、消えてしまいそうな弱々しい笑み。
その笑みから目を離せないまま、ドクドクと壊れそうな程に鼓動を速めている心臓の音が頭に響く。
それはまるで私に何かを必死に訴えている様に感じた。
「……貴方……誰なの?」
震える私の問い掛けに男の顔から笑みが消える。
「さぁ……誰だったかな」
そう言って男が首を傾げ自嘲気味に笑ったその瞬間、どこからか軽やかなメロディーが流れて来た。
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