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第十七話 負の欠片
「こちらです」
そう言って少年が開いた扉の先に見えたモノに、思わず目を見開いた。
赤い絨毯の敷かれた広い部屋の中央に、大きなモニターが置かれている。
その画面に大きく映し出された男の姿を……私は知っている。
少し茶色い髪に、年齢よりも遥かに若く見える整った顔。
しかしその顔に似合わず、彼は不動産やホテルを経営している総合会社の社長でもある。
穏やかな笑みを湛えたその男は、画面越しに私を見つめると困った様に笑った。
「……お父……さん」
そう小さく声を漏らし、困惑した様に瞳を揺らす。
「お嬢様のご到着だ」
モニターの前のソファーに座る男はそう言って嘲笑を浮かべると、双子にそっと目配せをする。
「……茜様、こちらへ」
少女がそう言って私の背をそっと押すと、それに促される様にモニターから少し離れた椅子に腰を下ろした。
その私の後ろに双子が立つと、二人は私と同じ様に画面に視線を向ける。
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