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「け、恵!?」
「しつこい。またキスするよ?」
「っ!!」
抗議しようとする悠里の唇を何度か奪い、やっと悠里は大人しくなる。
まぁ目は口ほどにものを言うって例えの如く、全然納得していないようだったけど。
俺だって簡単に引いてやらない。
まだまだ言ってやりたいことは山ほどある。
だけど、俺らには今するべきことがあるから…
「それより今は病院、…な?」
悠里のお母さんに会いに行くことが優先だ。
それは悠里も同じだったから、溜め息をひとつつき、渋々と頷いた。
それからの俺らの行動は、それはそれは早かった。
新幹線のチケットを手に入れ、早々に新幹線に乗り込む……
新幹線の中で、話す時間はあったにはあったけど、公共の場で話せる内容じゃないから、お互い黙ったままで
……夕方には目的地の大阪に辿り着いた。
そして、そのまま嫌がる悠里を丸め込み、俺も悠里のお母さんが入院している精神科病院までやって来た。
「…本当に知らないからな?」
「分かってる」
病院の前で、そう何度も念押しされて軽く返事する俺に悠里はまた溜め息をつく。
前を歩く悠里の後に続き、病院の中へと向かう。
この時の俺は悠里の抱えてるものを少しでも分けてほしいと気楽に考えてた。
悠里の見てるもの、感じてるもの、…全てを共有したいって…思い上がってた。
でも、俺が想像してた以上に悠里が抱えるものは重かったんだ………。
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