第1章 新人はタイヘンです

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「田中さんは化粧品のある成分が肌に合わないから、いつもそれの入ってない商品を使うように気をつけてるの。 新製品は、田中さんの肌体質に合わない成分が入っててね、顔が赤く腫れちゃったって。 セールスがご自宅まで謝罪に行って、腫れも一時的なものだったから良かったんだけどね」 その言葉に血の気が引くような気がした。 「も、申し訳ございません、 私……田中様が来客されたとき『た行』のカルテをファイルごと他の先輩が使っていて。 貸して下さいって言えなくて……そうしたら田中様が急いでいらっしゃるみたいでしたから慌てて指定されたものを用意して、『新製品のサンプルですから使って見てください』って渡してしまいまして。 まさか、こんなことになるなんて」 いつもの流れの接客だった。 まさかカルテを確認しなかったばかりに、肌が腫れ上がってしまう事態になってしまうなんて夢にも思わなかった。
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