プロローグ

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「三神、来週はレポートの提出があるからな」 「あ、はい」 帰り際、割りと急いでいた俺に担任がそんなことを言う。 そういえば出してないのは俺と数人ぐらいだったっけ。 適当に話をつけて結構急ぎ足で自宅に向かう。 しかしまああれだ、瞬発力はあるが、持続力にはかける。 急ぎ足、でもバテる、みたいな。 体は割りと作ったつもりだけど。 とにかく急いでいるのだ、それこそ俺にとっては今日は絶対に遅刻できない、そういう大事な日。 息が乱れ、それでも急いでいる。 だが、学校というある意味で仕事のようなものを終えてから更に走っているんだからそりゃあ疲れるよ。 「あれは……」 運がないというか、こういう急いでいる場面に限って何かが起こる。 ひょっとしたらお約束なのかもな。 お婆さんが少し大きい横断歩道を渡れずにいる。 確かにここは信号の変わりが早く、荷物が重いせいもあるんだろうな。 「お婆さん、荷物持ちましょうか?」 「あら、ありがとう」 両手の買い物袋を受け取り、一緒に渡る。 今日は息子夫婦が一緒に住んでくれる最初の日だから奮発したの、なんて話をとても嬉しそうに話している。 結局、家まで付き合い、ありがとうというお礼とともに羊羹を手に入れた俺は再び来た道を引き返す。
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