乙女になるのは難しい

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――が、しかし。 こいつのこの目に睨まれて、咄嗟の嘘さえ出てこない。 「あの…コンビニの裏でかつあげにあっている男の人がいて…」 結局正直に話しているオレ。 話すしかなかった、オレ。 「“それ”に、どうしてお前が絡まれてんだよ」 「いや…たまたま。本当にたまたま、変な音が聞こえたから覗いただけで…」 「それで?」 「そ、それで…!?」 切り返しの意味が分からず、顔を上げる。 倉森は苦渋に満ちた顔を浮かべていた。 瞳は、もっと辛そうだった。 本当は逃げようとした。 今までなら「やめろ!」って啖呵をきって、立ち向かっていたけど、今日はしなかった。 ちゃんと逃げようとしたんだ。 ――だけど。 ぐっと力を込めて、倉森を見上げた。 「困っている人がいたら、オレは助けたい…!」 あんな現場見掛けて、ほっとけるわけがない。 ギュッと唇を噤むと、倉森の呆れた顔。 「……勝手に困っている奴を助ける義理なんてない」 「……っ!」 倉森の返事は予想もできないほど、冷たいものだった。 勝手に…? 勝手に絡まれている奴が悪いって言うのか? そんな薄情な考えに、ギュッと力が籠る。
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