甘くて苦しい香り

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一瞬、そのキスに何もかも奪われていることに気付き、慌てて力強く彼の身体を突き飛ばした。 「な、何するの?瀬尾くん」 怒りなのか、動揺なのか、混乱なのか。 声を震わせて精一杯睨むと、彼はゆっくりと口角を上げた。 「久弥」 何を言われたのか分からず、えっ?と眉をひそめると、 「俺の名前。久弥だよ、梓」 彼はそう言って私の頭をよしよし、と撫でる。 私は居たたまれなさに、部屋を飛び出した。
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