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赤の他人の死因になど、一体誰が興味を持つのだろう。
万人が死亡の際に死因を公表されるか、答えは当然否。
誰にも知られずにひっそりと死んでいく者すらいるのに、世の中には死因を公表されるべき人種というのが存在するらしい。
おかしな仕組みがあるものだ、と疑問が浮かぶ一方で、公表されなかったという事実だけが独り歩きするテロップは、もしも相棒を見ている最中でなかったとしても、【隠ぺい】というワードを容易に想起させる。
隠さなくてはいけない、何か後ろ暗いことがあるに違いない。
『真実を知りたいとは思いませんか?』
画面の中では杉下右京がそんなことを言っていた。
確かに、隠されれば知りたくなる。
が、隠ぺいを思わせるテロップも杉下右京のセリフも、引きこもっている内に半ば廃人と化しているみのりを突き動かすほどの刺激にはならない。
みのりにとっては所詮、赤の他人に起きた出来事だった。
2時間のドラマが終わる頃には、彼女はその速報のことを忘れ去っていた。
番組はそのまま夕方のニュースに切り替わるが、TVに興味を失ったみのりは部屋に閉じこもり、今度は惰眠を貪る。
携帯が数ヶ月ぶりのメール着信を知らせる、その瞬間まで。
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