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木造の旧校舎は今はもう使われておらず、年明けには取り壊し工事の着工が決まっていた。 施錠のなされた入口とは別に、裏にまわれば鍵の壊れた通用口が鈍い音を立てて2人を向かい入れる。 踏み入れると埃が舞い、湿ったカビ臭い空気が纏わりつく。 淀んだ暗い雰囲気に、男は怯んだ。 「ジェシー、やっぱり……」 「お願い、リュウ」 「だけど」 「ごめんなさい……でも」 分かった、と、男は少女の謝罪を遮る。 「もう謝らないで。嬉しいんだ、俺だって本当は」 少しでも落ち着ける場所を探して、2人は奥へと進んだ。 木造の床は、一歩踏むごとに不気味な音を立てる。 けれど、固く繋ぎ合った互いの手から伝わる熱が不安を吹き飛ばした。 各教室の入口に、墨で学年やクラスが書き入れられた木の板がぶら下がっている。 1階は避けたかった。 万が一表を通りがかった誰かに覗かれたくない。 1年生の教室が並ぶ1階を素通りし、階段を見つけると迷わず上に上がっていく。 2階へ着くと、階段正面が職員室のようだった。 長く続く職員室に沿って廊下を進むと、その奥に校長室の表示がある。 もしかしたらそこならば、と、男はそっと引き戸を引いた。
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