第三章 ギルド連盟 ~六勇士~

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 セシリアには、グレーフードを深く被ったままであるが、顔を晒していなくてもその人物の魔力や雰囲気で誰なのかが一目でわかっていた。それ程までに“人を萎縮させてしまうような強い魔力”を持つ人物である。  そして、セシリアの命の恩人であり、セシリアをギルド最強になるまでに強くしてくれた“師匠”の存在が今、目の前にいた。  師匠は神出鬼没な人物だ。どこにいるかいつも行方知れず──そして、目の前にいる師匠こそが聖域としての地位を持つ、“3人目のSSSランク保持者”でもある。ギルド最強とも呼ばれているセシリアだが、実質的に言えば師匠にまだ力が及ばないかもしれない。 「……久しぶりだな、お前達。元気にしてたかぁ?」  師匠は相変わらず脳天気な話し方をする。ケラケラと笑いながら、セシリアとルシウスに一歩ずつ近づいていった。 「えぇ。お久しぶりです。師匠。また今度はどこへ行って…?らっしゃったのですか」 「セシリア、相変わらず敬語の使い方が下手くそだな。ったく、今いくつだってんだ」 「……それは今、関係な…いです」  師匠の前だけは、子供のような表情を見せることが出来る。自分よりも上の立場であると認識しているからだろう。セシリアは今、ふてくされたような、いじけたようなそんな表情をしている。 「師匠がここに顔を見せたということは、もうご存知なんですね?」 「ルシウス、お前はもっと感情を出せ。それだからお前の弟も似ちまうんだよ」 「………………」  思いっきり話を流されてしまったルシウスは、師匠の言葉に押し黙る──感情があまり見えないとは昔からよく言われていた。もちろん目の前にいる師匠からだ。  彼を師匠と呼んでいるのはルシウスも同じく、師匠の弟子だった。実は師匠の弟子になったのはルシウスの方が早かったりする。一番弟子がルシウスで、セシリアは師匠の二番弟子だった。  今別の誰かに話せば、信じてもらえないような話ではあるが、しかし、感情があまり表に出ないのが弟も似てしまったとは不覚だった。だが、そんな反面、嬉しいような感じもする。 「あ~だからと言って俺がお前の表情がわからないわけじゃねぇ。小さい時から面を拝んでりゃ、そのうちわかるようになる」  その後、ニヤニヤするな。と言われて驚いてしまったと同時に、さすが師匠だと心の底からルシウスは思った。
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