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「…って、やばい!もう戻んないと5分経ってる!」
周りの景色にのんびり視線を巡らせていれば、5分なんてあっという間だった。
時間を確認して、慌てて踵を返す。
表示された時刻は、すでに結婚したい男No.1と別れてから5分ちょっと経ってしまっていた。
ぼーっと歩いていたせいで離れた距離も結構なもの。
「えっ!しかもこんなときに電話…!」
ちょっと遅れる、とインスタントメッセージでも送ろうかと小走りしながらカバンから携帯を取り出すと、絶妙すぎるタイミングで鳴る着信音。
画面には" 会社(デザイン部) "の表示…
(なぜ今?!出るべきか、出ざるべきか…!)
「あ、あれ?え?うわッ!」
「ッきゃ、あぶな…っ」
ぐら、と傾むく視界の中、いつだったかこの道で初めて結婚したい男No.1と出会した時と同じく、また教訓を得た。
携帯の画面を眺めているとき、思ったよりも視界は狭くなっている。
そしてそんな状態で道を走るのは、とっても危険、だ。
「ご、ごめんなさっ……え?」
『こちらこそ、俺もぼーっと歩いてたから』
ドンッ、と強い衝撃に、この言葉とこの展開。
目の前には、
『あ、これ落としましたよ、パスケース』
若手人気俳優――…高橋祐也。
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