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始まりの剣
~平原~
嘗ては、青々と草花がお生い茂っていただろう平原は今、大地は捲れ上がり、赤黒く染め上げられていた。
草原に埋め尽くすのは、甲冑を纏った人や馬、異形なまでに発達した手足を持った浅黒い肌の魔族や魔獣、洗練された顔立ちに尖った耳を持ったエルフ族、端間は絶対強者と謳われる竜など様々な種族が力なく地に付していた。
そんな平原で剣を構え一人佇む漆黒の長髪に漆黒の瞳の女性がいた。
彼女が手にするは自身の髪と瞳の色と同じ漆黒の闇を纏いた片刃の剣。
剣の鋒が向くは小さな闇。
それは小さくも何にも染まることのない闇、希望を奪い恐怖に支配する闇。
闇と対峙する女性の口が言葉を紡ぐが対峙する闇からの返答はない。
口を閉ざし闇に歩み寄る。
闇の数歩手前で立ち止まる。
闇は彼女の胸の高さで浮遊しており、その存在は今にも消えてしまうのではないかと思うほどに小さく希薄であった。
闇を幾ばくか見つ続けていたが、吸い込んだ息を吐くのと同時に手にしていた剣を降り下ろした。
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