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数年後。
「パパ、ママ早くー」
「こら幸、待ちなさい!」
駐車場に着くなり、すぐに降りて走り出した幸を慌てて追い掛ける。
あれから湯治君との間に女の子の幸が産まれて、もう三年になる。
「みゆき、走ると危ないぞ」
「分かってるけど幸が」
追いかけようとしたけど、湯治君に止められてしまった。
「俺が行くから、みゆきはゆっくり歩いておいで」
車の鍵を閉めると湯治君は私の肩を叩き、幸を追い掛ける。
湯治君は変わらず優しくて、幸も元気に育って。そして今、私のお腹の中には新しい命が宿っている。
「ママー!早くしないと、じいじとばあばが帰っちゃうよー」
湯治君に捕まった幸が叫んでいるのを聞いて、つい笑ってしまった。
「はーい」
お腹を擦りながら二人の元へと歩み寄る。
私に恋する力をくれた湯治君。
これからは私に、未来を幸せに生きる力をくれる?
...ううん。きっとくれるよね。
幸と産まれてきてくれるこの子と一緒に。
end
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