≪10年前≫

18/18
5597人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
羽島さんは笑っていた。 私は怒った顔を作っていたけれど、心の中は嬉しさでいっぱいだった。 羽島さんは、今どのくらいの数値なんだろう。 50もまだいってないのかもしれない。 いつか100になってくれるかな。 私と肩を並べてくれるかな。 その時私はもっともっと増えているだろうけど。 説明が下手だと言われた好きの数値の話を頭の中で巡らせながら、私は幸せな気持ちに浸っていた。 雨音も、私達が少しずつ距離を縮めていくさまを、祝福してくれている音に聞こえた。 純粋だったってことは、単純だったってことだ。 あの頃の私は、“好き”が原動力だった。 その力で無敵になれていた。 大人になってから、それが足かせになるなんて思ってもいなかった。              
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!