5767人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「あーーー。疲れた」
10分後。
車に乗り込んできた羽島さんは、ハンドルにうなだれかかりながら、めいっぱい息を吐く。
「とりあえずメシ食いに行かない?」
「……」
助手席でカバンの持ち手を握り締めたまま答えずにいると、
「そんなに話早くして帰りたい?」
と、ハンドルに乗せた腕から顔を覗かせて聞いてくる羽島さん。
「……そうですね」
と答えると、「ふーん……」と言って、姿勢を変えずにそのまま無言になった。
彼の顔を直視できない私は、ひたすらダッシュボードを見つめる。
「3時間、ちょうだい」
ゆっくりと体を起こした羽島さんがようやく口を開き、シートベルトに手をかける。
「3時間?」
「うん。その後、ちゃんと聞くから、話」
「……」
返事もしないうちに、羽島さんは車のエンジンをかけ、地下駐車場を出た。
よく知らない洋楽が流れだし、車内のこの重い空気をいくぶん軽くする。
「お好み焼き、うまいとこ知ってるんだけど、大丈夫な人?」
「……大丈夫、です、けど」
「じゃあ決まり」
「……」
最初のコメントを投稿しよう!