第一章 相対取引(あいたいとりひき)

32/47
7497人が本棚に入れています
本棚に追加
/666ページ
「は、犯罪だなんて、そ、そんな!」 「冗談だから」とひとみさんは笑った。 「とにかく入って、早く買い物に出たいしさ」  慌てて扉の内側に入る。ハンガーを渡された。 「コートはそこにかけておいて」  言われたとおりにウッドポールにかけた。フリルのついたセーターを着てきたので、恥ずかしかった。  ひとみさんの部屋は、とても広かった。広いのに、物が少ない。  私のワンルーム全体の二倍はありそうなリビングと、他にもいくつか部屋があった。  リビングには、テレビも見当たらず、まだ何も描かれていない、真っ白な……なんという名前か忘れてしまったけれど、それが木の大きな写真立てのようなものに立てかけてある。 「家具をほとんど捨てちゃったんだよね。律に似合う椅子を明日探しに行こう」
/666ページ

最初のコメントを投稿しよう!