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その潤いのある声に、身体中の産毛が逆立つような感じがした。
何故この女は、ここまで惨い身体になったのに、穏やかに笑っていられるんだ。
そうだ、あの時――俺が彼女を初めて見た時も、似たような印象を受けた。
確かに目の前に存在しているにも関わらず、どこか現実と乖離している、不思議な女。
地に這いつくばり、今にも現実に押しつぶされそうなこの俺とは、全く対照的だった。
だから、俺はこの女を破壊することにしたのだ。
恥も倫理もない、どうせこのまま仕事を得られず、ホームレスになって野垂れ死にするなら、こいつを無茶苦茶にしてやってから自殺してやる。
彼女から漂う不可思議な魅力が、俺を凶行に走らせた、それだけだ。
目の前にいる、もうすぐただの肉の塊と化す女が笑おうが泣こうが、後戻りはできない。
そう自分に言い聞かせると、サディスティックな欲求が再燃した。
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