第1章 桜の頃 海斗編

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「やぁ、君、バスケ好き?一緒にやらない?」  海斗は、中学に入ってすぐの頃、知らない男子に話かけられた。 彼は、海斗より少し背が高く、ニッと笑った顔が爽やかで印象的だった。 “誰?” まだ全員を覚えているわけではないが、同じクラスではないように思われる。人違いかと周りを見た。 「君だよ?なぜキョロキョロしてるの?」 彼は、白い歯を見せて笑った。 「僕?」 と聞くと、うんうんと頷いた。 なぜ自分なのか解らない。 “変な奴。関わるのはやめておこう。” 「今、そんなに時間ないんで。他の人誘いなよ。」 そう言って、海斗はその場から去っていく。 だが、彼は他の人が通りかかっても、誘おうとはしなかった。 “なんで僕だけに声をかけているんだろう???” ここら辺の小学生は、そのまま近くにある中学校に入学する。 クラスは顔見知りも多いし、仲のいい子が数人はいるものだ。 彼は隣のクラスだった。 でも、彼は友達がいないのか、しょっちゅう海斗に声をかけてきた。 何度目かの誘いの時、海斗は正直に言った。 「バスケ、したこと無いんだ。」 そう言うと、彼は意外そうな顔をした。 だが、人懐っこく笑うと、教えてあげるよ、とボールを投げてよこした。 帰り道、ハーフコートがある近くの公園でバスケをすることになった。 プレーをしだすと、だんだんと楽しくなってきて夢中になってボールを追いかけた。 「楽しいね。」 息を弾ませ、素直な気持ちで言うと、 「じゃあ、一緒にバスケ部に入ろうよ。」 身を乗り出して彼は誘う。 その必死さが可笑しくて、ついつい笑ってしまった。 「あっははは。なんだか唐突だね。君、名前はなんて言うの?」 そう聞いたら、彼は物凄く嬉しそうな顔をした。 「七条蓮って言うんだ。よろしくね!」 「僕は、雪宮海斗。こちらこそよろしく。」 彼は、何度も海斗の名前を繰り返していた。
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