竹垣に雪 咲き誇る冬牡丹 (非定形)

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この句は前掲した『彩りの秋』の句(*表紙リンク0⃣) 竹垣の香 彩なす秋牡丹 に対する冬の応答句である。 <季題> 雪、併せて冬牡丹 <季節> 晩秋から仲冬 竹垣: 竹で編んだ垣根。前掲参照(*表紙リンク1⃣)。この句では『彩りの秋』の句以上に「人為」を象徴する、と解釈すべし。 に: 与格の格助詞。同時に、同じく与格格助詞としても機能し得る並立助詞「と」の役割も併せる。 雪: 降雪・積雪の如何不問。ただし、この句の一枚目主役格は明らかに下句「牡丹」であるため、豪雪や霙雪は不適当であろう。 咲-き+誇-る: 文字通り、誇りかに咲くこと、また咲く花の様が誇りかであること。後半「誇-る」の連体形により直後下句「冬牡丹」を修飾。 蛇足ながら、必ずしも「絢爛豪勢」である必要はなく、また類似こそあれ「傲岸不遜」とは明確に一線を画している点に留意されたし。 冬牡丹: 一般に「冬牡丹」と称される促成栽培の春牡丹ではなく、春秋二季咲きの「寒牡丹」を指すものとする。竹垣同様前掲を参照のこと(*表紙リンク2⃣)。その栽培では原則的に、秋冬期咲きの花をより華美にするため春に生長してきた花芽を全て摘み取り処分する。 非定形: 前掲『彩りの秋』と併せ、非定形である。この句も前掲の句も定形に纏めることが可能だが、五七五によるリズムではなくむしろ「文節そのものによるリズム」を採用。これにより、季題呈示と全十七音の制限のみを残して、人工の枠組たる「(韻文の)定形」からより自由なものとなり、厳粛な人為の形式美よりも自然な発語の自由闊達に重きを置くことが可能となる。発芽から開花へという自然と、それらの徹底管理統制という人為の間、それでも一個の生物として誇りかに自らの生命を顕示し(あらわにしめし)謳歌する(うたいあげる)様を、散文と同様の自由自然な語感を通して鑑賞されたし。
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