第1章

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 初めて出会ったのはつい最近で。  今では二人恋人同士。 「聡くんはさ、将来何になりたい?」  そんなことを聞いてみた。  夢追い人がかっこいいとかそういうのではなく、単純に興味の問題。 「将来か。考えたこともなかったな」  頭をかしげて考える。  その仕草が好きだった。  彼の仕草がいちいち可愛くて。  そういうところが好きだった。 「遥には何かあるのか?」  私にも聞かれた。 「私はー……お嫁さんかな」  半分嘘、半分本当。  そうありたいと思える人がいればそうしたい。  例えば……聡くんとか。 「ははっ、なにそれ。メルヘンすぎて似合わないよ」  やっぱりそう言われた。しかしメルヘンが似合わないというのは心外だ。 「聡くんだって何も考えてないじゃん。それと一緒だよ」  むっとして言い返す。 「俺だって考えてるから。例えば……まぁ色々?」  ほら、何も考えてない。だからこそ笑い合える。  夢なんてのはどうでもいい。要は今ここに自分たちがいるかどうかなのだから。 「私ね、幸せになりたい」  そう口にして言葉を続ける。 「好きな人と結婚して、好きな仕事をして。そして好きな人との子供を産んで、好きな人と一緒に死んでいけたらいいな」  全部理想。それでも全部叶えたい夢。 「そっか。いいじゃん。俺もそうしたい。そうありたい」  肯定してくれる。こっちのほうがメルヘンで突拍子もないことだけど。 「だからね。好きだよ、聡くん」 「……あぁ、俺もだ」
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